今回は、紅ミュージアム資料室から江戸時代の化粧書『都風俗化粧伝』(みやこふうぞくけわいでん、と読みます)についてご紹介します。
『都風俗化粧伝』は、文化10(1813)年の初版以後、大正11年までに5回も重版されたロングセラー本でした。上・中・下の3巻からなる当時の総合美容本で、その内容は白粉の塗り方や口紅の点し方、顔の造作別に示した眉やアイラインの引き方といった化粧方法はもちろん、手足のお手入れ方法、女性の黒髪をより美しく見せる方法、さらには背の低い人を高くみせる着こなし方など、実に様々なテクニックが詰め込まれています。現在でも美肌や艶やかな髪、美脚など、外見をより美しく見せることへの女性の執着は相当なものですが、江戸時代の女性も決して今に劣ってはいなかったことがよくわかります。
ちなみに下の画像は、「鼻が低いのを高く見せる方法」について紹介しているページです。
※今後は、他のページの画像も紅ブログでUPしていく予定です。実際に資料室でも、時々お客様にお見せするページを変更しています。
ところで、この化粧本、一体誰が書いたのでしょうか?
1世紀に渡ったロングセラーですから、当然その著者の情報は今に伝わっているに違いないと思われるかもしれません。しかし、残念なことに著者・佐山半七丸に関する詳細はまったくと言っていいほど不明なのです。なお、本書の作画を担当している速見春暁斎に関しては、関西の浮世絵師として活躍し、天明から文政にかけて58種もの出版物にその名をとどめていることが確認できます。(高橋雅夫校注『都風俗化粧伝』解説参照/東洋文庫414・平凡社刊)
かつて女性に支持された総合美容本『都風俗化粧伝』。まだご覧になっていらっしゃらない方は、是非一度、紅ミュージアムへお越しください。皆様のご来館、心よりお待ちしております。
資料室担当T