今年も7月に山形県の紅花生産者を訪ね、紅花摘みと紅餅作りをお手伝いしてきました。「小町紅」は紅花の花びらにわずか1%程度含まれる赤色色素のみでできていますが、たくさんの紅花を摘んで紅餅に加工する大変さを実感しました。
紅花は7月に一斉に咲きます。この時期は雨の日も多いため、晴れた日の早朝から暑い日中まで摘まないと間に合いません。私達が訪ねた日も大雨でしたが、翌朝は無事晴れて、美しい紅花畑の中で、雨露でしっとりと柔らかくなった花びらを摘むことができ、収穫の喜びを感じました。紅花には萼や葉に細かな棘がたくさんあるため、手袋をはめて一輪ずつ手で摘みます。つぼみや咲き始めのものは残して、ちょうど摘み頃の花びらだけを選びながら、機械ではなく人の手で摘んでいるのです。
次は、摘んだ花びらが傷まないうちに紅餅に加工します。洗いながら揉んで黄色色素を洗い流した後、数日間発酵させ、餅のように杵と臼で搗き、平たく丸い形にして乾燥させます。様々な工程を経て、ようやく紅餅ができあがります。生産者の方からは、紅花摘みの忙しい時期に紅餅に加工するのは大変だという声もお聞きしました。しかし紅餅作りは保存や輸送をしやすくするだけでなく、貴重な赤色色素をより多く取り出すために必要な工程なのです。
紅餅は、もうしばらくすると私達の手元に届きます。ここからが紅屋の仕事。江戸時代からの秘伝の製法で、紅餅から赤色色素を抽出します。「小町紅」の美しい玉虫色と、水で溶いた時の鮮やかな赤は、良質な紅花から高純度の赤色色素を抽出した証です。
「伊勢半本店 紅ミュージアム」では、様々な器に入った「小町紅」や、詳しい紅餅の作り方などをはじめ、紅の歴史と文化をご紹介しています。是非、当館にて紅の魅力を五感でお楽しみください。