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1月26日「江戸の化粧再現講座」~娘と年増の比較化粧~を開催しました

口紅はもちろん、チークやアイシャドウ、今やアイブロー、マスカラに至るまで、私たちには豊富な色の選択肢があります。江戸時代の女性が赤・白・黒のわずか三色で化粧をしたと聞いて、単調な仕上がりを想像する方も多いのではないでしょうか。
 
1月26日(土)に開催した「江戸の化粧再現講座」では「娘と年増の比較化粧」と題し、学芸員の解説付きでデモンストレーションを行い、娘と年増の化粧の工程や仕上がりの違いを見ていただきました。今回は8名もの方が着物で参加してくださいました。
 

 
娘の化粧は紅ミュージアムの資料室でも人気の美容ハウツー本、「都風俗化粧伝(みやこふうぞくけわいでん)」の記述を参考にしました。
 

 
 白粉を刷毛で刷いてから半紙に吸わせたり、手ぬぐいで押さえたり・・仮面のような白塗りにしないための手順が具体的に指南されています。「光沢」をツヤと読ませる記述も大変多いそうで、テクスチャーへのなみなみならぬこだわりも感じられます。
  

  
娘時代ならではのポイントメイクが眉化粧。紅を下地に眉墨を重ね、目弾きを入れると表情が生き生きし、健康的な仕上がりとなりました。
 
年増の化粧は「容顔美艶考(ようがんびえんこう)」の記述を参考にしました。結婚が決まるとお歯黒をし、妊娠すると眉を剃り落とすという当時の風習にモデルもトライ。(「年増」という言葉にはやや抵抗がありますが、当時は25歳ぐらいで既に年増と呼ばれていたそうです!)
 

 
注目すべきは白粉を塗る前に紅を下地として用いて、くすみをカバーするテクニック。たるみやうるおい不足など、娘時代とは異なる肌のコンディションに対応するための、きめ細やかな工夫のかずかずに、参加の皆様も一段と引き込まれたご様子でした。
 

 
再び娘と年増のモデルが二人並んで登場しました。当時は行灯の淡い明りで過ごしていたことを踏まえ、会場の照明を少し落としてみたところ、素肌に薄いベールをかけたようなほの白い肌が浮かび上がりました。年増のお歯黒も肌の白さを引き立て、妖艶に見えます。
 
参加の皆様は終始熱心にメモをとりながらご覧になり、「江戸時代はどうやってクレンジングしていたの?」などの質問も飛び出しました。
 
最後に、伊勢半本店の御料紅(天然色素の紅のみを用いた食紅)を使ってこの日のために虎屋さんに作っていただいた和菓子とべにばな茶を召し上がっていただいて、お開きとなりました。
 
明治以降、衣食住とともに日本の化粧事情は大きく様変わりし、人々の美意識も変化しました。とは言え、加齢による肌の悩みや欠点をカバーして少しでも美しく見せたいという女心そのものは、今も昔も変わらないのかもしれませんね。
 
さて、2019年度上半期開講予定の講座につきましては、近日中にHPにてご案内いたします。
 
どうぞご期待ください!
 
 
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