「金継ぎ連続講座」~漆で繕うお気に入りの器~の第1回目が5月11日(土)に開催されました。
「金継ぎ」とは、漆を使って器を修理する方法です。
日本では、江戸時代以前から「漆継ぎ」(金属の粉を蒔いて仕上げるのが「金継ぎ」)、また、江戸時代後期には鉛ガラスを使って修理する「焼継ぎ」という手法が誕生し、「継物師」や「焼継師」と呼ばれる職人が行商をしながら、壊れた器を補修していました。
江戸時代に使われていた化粧道具には磁器製のものが多かったので、やはり割れたり欠けたりすることがありました。
壊れた場合、捨てられてしまうものもあれば、修理して使い続けられたものもありました。
実際、当館の所蔵品にも「焼継ぎ」によって修理された化粧道具があります。
今回は連続講座の初日ということで、普段は展示していないそれらの化粧道具を特別にご紹介しました。
右手前が「染付松竹梅丸文嗽碗」、左奥が「染付鳳凰・龍唐草文小碗(紅猪口)」です。
継いで修理した部分が分かりますか?
修理してでも使い続けたいという、かつての使用者の想いが伝わってくるような気がします。
所蔵品の紹介のあとは、いよいよ講座のスタートです。
講師は、漆芸家の小林広美先生。
初回のテーマは「接着」です。
参加者の皆さんには、割れ/欠け/ヒビ割れがある器を数点ずつお持ちいただきました。
講座が始まる前に状態を先生に見ていただき、講座で取り組む器を決めました(1点の方もいれば複数の方もいます)。
作業を始めるにあたり、「金継ぎ」の作業には漆を使いますので、触れて肌がかぶれないよう、漆を使う作業の時は必ず手袋をするなどの注意がありました。
作業は破損の種類により違います。
先生が、それぞれの作業を実演しながら説明してくださいました。
まずは「割れ」の場合。
割れた部分に接着剤が馴染みやすいよう、金ヤスリで面取りをします。
そこに生漆を塗り、ウェスで拭き取ります。
この作業は、器と接着材(漆)との相性をよくするためで、3種類共通の作業です。
その後、小麦粉と生漆を使って、接着材となる「麦漆」を作ります。
どのくらいの固さが適切か、先生のアドバイスを受けながら作っていきます。
麦漆で割れた部分を接着し、マスキングテープで留めれば作業は完了です。
続いては「欠け」の場合。
欠けを埋める漆は「コクソ漆」で、これは「割れ」の修理で作った「麦漆」に木粉を混ぜたものです。
欠けた部分にコクソ漆を盛ります。
※画像は先生の説明の様子。
最後は「ヒビ割れ」の場合。
まずは、接着材を入れやすいよう、割れに沿って0.2ミリくらいの溝をつけます。
その時に使うのが電動のルーター。
慣れない道具なので、皆さん慎重に作業を進めていきました。
(ヒビ割れの接着作業は次回行います。)
言葉で説明するとシンプルですが、実際にやってみると、先生の実演のようには中々うまくいきません。
接着材(漆)が器の他の部分についてしまったり、割れ同士を接着するのが難しかったり・・・、皆さん悪戦苦闘しながらも頑張っていました。
次回は5月25日実施で、ヒビ割れの接着に使用する「目擦り漆」作りと水研ぎの作業をします。
※本講座は連続講座のため、途中からのご参加は受け付けておりません。
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