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12月20日「塗る、研ぐ―漆箸制作入門」③を開催しました

いよいよ最終日。「塗る、研ぐ―漆箸制作入門」講座のクライマックスともいえる「研ぎ」の工程です。
 

 
薄く切り出された硬い砥石を水で濡らし、模様を研ぎだしていきます。お箸を1本ずつ研いでいると途中で砥石がへこんでくるので、粗めの紙やすりで平らになるように整えます。
研ぎすぎると上塗りの漆も下塗りの漆も研ぎ破って木地が見えてしまいます。ツノが取れてきたら目の細かい砥石に変え、さらに水研ぎペーパーに変えて慎重に作業を進めます。水研ぎでは、色漆が削れるとお箸の模様が濁って隠れてしまいます。時々ウェスで拭い、また水をつけて削りを繰り返します。砥石を洗うカップの水も、すぐに茶色に濁ってしまいます。
 

 
下の漆の模様が見えてきたところで完成と手を止める方もいれば、もう少し平らになって模様が出るまでと研ぎ進める方もいます。2本の箸を4面均等になるよう研ぐことに集中し、黙々と作業を進めます。漆の塗膜は想像以上に薄く、はっと気がつくと木の色が見えてきたという方もいらっしゃいましたが、それも風合い。重厚な風格のあるもの、軽やかでモダンなもの、フレンチシャビ―風やアフリカンテイストなど、予想もつかなかった個性的で味わい深い表情が現われはじめ、皆様静かに興奮されていました。
 

 
最後に擦り漆をしていきます。少しぺとぺとしますが、ウェスやキムタオルで、とにかくしっかり拭き取ります。少し残した方がいいのではないかと思いますが、拭ききってしまいます。それでも粘着力のある漆はわずかに残り、乾くときに膨張するのと同時に下の傷を埋めて、ツヤを出す効果があります。
 

 
この作業はこの後も何度か繰り返す必要があり、そのままお預かりして、岩田先生に確認していただきながら5回擦り漆を重ねた後、完成したお箸を後日皆様のお手元に郵送させていただきました。岩田先生からは、色漆は時間をかけて乾くほど発色してゆき、また、使用すると僅かずつ摩耗し、下地に塗った色漆がより良く出てくると伺いました。作品の出来栄えをお楽しみいただきながら、愛着のあるお箸で、ご自宅でのお食事がよりいっそう楽しくなると同時に、漆塗りの魅力を感じていただけたらうれしいです。
 

 
作業中には豊富な体験と知識に基づいた貴重なお話をたくさんお聞かせいただきました。湿度の高い日本の風土は漆ととても相性が良く、生活の中で長く親しまれてきた理由が腑に落ちます。手仕事と素材への理解を深められた3日間でした。
 
 
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