新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、2020年7月より延期となっていた「組紐体験講座~紅染めの絹糸を組み上げる~」を12月11日に開催しました。
講師は、日本橋にある株式会社龍工房の福田隆さんと福田隆太さんです。
龍工房は、明治22年(1889年)に小田原で家業として組紐作りを始め、昭和38年(1963年)に福田万之助氏によって設立されました。
以来、絹糸の染色・デザイン・組みまで一貫して手掛ける数少ない工房として、帯締や帯揚、羽織紐などの組紐和装小物を製作されるほか、組紐の技術を使用した新しい商品開発などを意欲的に行っていらっしゃいます。
伊勢半本店とのお付き合いは、東京都の「江戸東京きらりプロジェクト」から始まり、今回、初めてのコラボレーション講座の開催となりました。
開催延期中の今年2月に、体験で使用する絹糸の染色をスタッフが見学させていただきました。
龍工房の職人さんにより、紅花の花びらに含まれる2つの色素:まずは黄色、そして赤色の色素が抽出されそれぞれ染め付けられ、美しい絹糸ができあがりました。
黄色はまるで黄金色のように輝き、赤色は染めの回数により濃淡の違いがあり、どれも柔らかで美しいと参加者の皆さんも驚かれていました。
講座の冒頭では、福田隆先生が組紐の歴史や龍工房の取り組み、また今回の講座で使用する純国産の絹糸について説明してくださいました。
日本伝統の紅と組み合わせるのだから国産の絹糸でないと、とお選びくださったそうです。
しっとりと気持ちがいい手触りの国産絹糸。講座で使用できるなんてとても贅沢です!
今回の講座では、指と丸台(組台)を使用しての2種類の組みに挑戦しました。
「組紐」というと、組台を使うイメージが強いですが、組台が登場したのは江戸時代後期以降だそうで、それまでの組紐は指で組まれたものだそうです。
8名の参加者が2つのグループに分かれ、途中で交代し、両方の組みを体験しました。
まずは指を使っての組み体験。
今回の組み方では、絹糸を3本(赤色or黄色2本・白1本)使用します。
準備として、3本の絹糸を輪っか状にして根元を束ねておいてくださったので、6筋の絹糸を組んでいく形になります。
竹にかかったフックに、絹糸の束の根元を引っ掛けます。
根本から指までの絹糸の長さは47cm。
右手の人さし指、左手の人さし指と中指に絹糸の輪を掛けていよいよスタートです。
福田隆太先生が「指を入れ替えて中通し、手前キャッチで開く」とリズミカルに唱えながら組み方を教えてくださいます。
参加者の皆さんは、慣れてくるまでは指が迷うような仕草を見せていましたが、慣れてくると、スタッフが声をかけるのをためらう程に集中してテンポ良く組んでいました。
奥から手前に段々と組み上がってくると、自ずと手の開き方が小さくなっていきます。
同じ力の入れ具合で手を開くと、力が強くかかってしまい、組みがきつくなります。
指の動きに間違いがないか気になり、つい指先に目が行ってしまいますが、見るポイントはまさに今組んでいる部分。そうすれば、組みの強さ・緩さにも気づけるとアドバイスをいただきました。
こちらは丸台での体験の様子。
絹糸が2筋ずつ、90度ごとの放射状になるよう、下に重しをつけた状態でセットされています。
手前⇔奥、左⇔右を交互に入れ替えて組んでいくと、台の真ん中から下に組紐がどんどんできあがっていきます。
組む時のポイントは、絹糸を入れ替えた後に重しをトンと落とし、きちんとテンションをかけること。
それから、絹糸を持ち上げず、台に滑らすように入れ替えること。持ち上げ過ぎてしまうと、逆側の重しに引っ張られ、せっかくの組みが崩れてしまうこともあります。
こちらも慣れてくると、テンポ良くリズミカルに組むことができるようになってきました。
体験しながら「この台が欲しい…」と呟かれる方もいらっしゃるほど。
できあがった組紐はくるりと輪にすると、ちょうどストラップに良い長さ。
いつも講座に参加してくれる小学生の女の子は、「銀象嵌体験」講座で象嵌を施した桜にこの組紐をつける!と嬉しいことを言ってくれました。
※この画像は参加者の方にご提供いただきました。
すっかり組紐の虜になった参加者の皆さんに、先生からアドバイス。
特に指組みはお家でもできるので、糸は刺繍糸や毛糸など好きなものでいいし、フックではなく、伝統的な組み方のように足の指を使っても、引き出しなどに挟んでもいいとのこと。
せっかく覚えた組み方を、ぜひお家でも実践して組紐に親しんでほしいと、先生お二人ともおっしゃっていました。
伝統工芸と聞くと、つい敷居が高いもの、自分が関わるものではないと思ってしまう方も多いかもしれませんが、今回の講座をきっかけに、組紐や紅に親しんでいただけると嬉しいです。
当初の予定から約1年半。
長く開催をお待ちくださっていた方も多くいらっしゃいました。
会場は扉を開放したままにし、二酸化炭素濃度の数値を注視しながら、空調やサーキュレーターを使用して換気に努めました。
また、参加者の皆さんにも、マスク着用や手指消毒にご協力いただき、できる限りの感染症対策をしながらの開催となりました。
紅ミュージアムでは今後も、安心してご来館・ご参加いただけるよう対策を取って参りますので、どうかこれからの取り組みにもご期待ください。
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