手仕事ギャラリー「赤絵細描と共に歩んだ軌跡-福島武山 喜寿展」の併催企画として、初心者向けの赤絵の絵付体験講座を3月5日に開催しました。
講師の福島礼子氏は、父・福島武山氏のもとで技術を学んでこられました。北陸新幹線・金沢駅の待合室の陶板制作や、能美市美術展、伝統九谷焼工芸展にて名誉ある賞を受賞されるなどのご活躍をされています。
今回は、福島礼子氏がアクセサリー制作「WearKUTANI」で参加されている、能美市観光物産協会にご提供いただいた白磁プレートに赤絵細描の絵付を施し、ブローチを制作する講座を開催しました。
参加者の皆さんが、講座前にブローチの形を選ぶことから始まります。
わくわくとしながら手に取った紫陽花、リーフ、ハートそれぞれの白磁プレートには、あらかじめ模様のガイドとなる下書き線が焼き付けられており、ゼラチン質のにかわ液を塗って、赤絵具が定着しやすい状態にしてあります。
よく見ると、どの形にも正方形と三角形の下書きの線が描かれていました。
講座の最初に、本日使用する道具の説明がありました。
机には、ガラス板に塗られた赤絵具と水、面相筆、にかわ液、綿棒、竹串、布手袋などが用意されています。
赤絵具は、ベンガラと粉末状のガラス質のものが混ざっているそうで、焼き付けるとツヤがある見た目に仕上がるのだそうです。これに水を加えて繊細な線が描きやすい程良い固さにします。
面相筆は、より細い線が描けるように加工されています。にかわ液と綿棒や竹串は修正用です。
続いて模様の描き方の解説です。
ここで下書き線が2種類ある秘密が分かりました。
正方形は七宝文様。輪がつながる形が人の輪や子孫繁栄に通じるおめでたい模様です。
下書き線の左右に膨らみをもたせた丸い線を入れていきます。
三角形の下書き線は、麻の葉文様になります。成長が早い麻の葉は、古来、赤ちゃんの産着の模様にもよく使われ、子どもの健康や成長を願う意味が込められています。
「“Y”という字を三角の中に描いていくんですよ。描き終わったら180°回転して更に書き進めてください」と分かりやすい説明に参加者の皆さんは、ワークシートを使いながら念入りに練習します。
いよいよ白磁プレートの絵付に挑戦です。
細い線を描きたいからといって、筆に含ませる絵具が少ないとかえって継ぎ足しが増えるので上手くいきません。筆の根元までたっぷりと含ませた方が、より一度に長い線が描けるそうです。
細くて毛足の長い筆で、慎重に描くため、皆さん沈黙……集中します。
「緊張して描いている間に、絵具が乾いてかすれてしまう…」
「線が震えて泣きそう」
「細く描こうとすると色があまりのらず、力をかけると太くなるので難しい」
筆先が素地に当たってるかなどうかなという優しいタッチを心掛けて筆を動かしていました。
ブレの無い線を描くには、素地の固定が大切だそうです。普段、小さいものは台紙に貼ったり、大きい花瓶やお皿などは、うまく形に合わせてダンボールをカットして固定することもあると教えて頂きました。
「いくら時間があっても足りない!!」描いては修正のための拭き取りを繰り返しているとあっという間に時間が過ぎてしまいます。細く均一な線を描くのはとても難しいけれども、回数を重ねるほど線は丁寧に、綺麗になっていきました。
模様が仕上がったところで、ブローチの縁もおろそかにしません。縁面も赤くべた塗りします。
もし色の薄いべた塗りに仕上げたい場合でも、絵具は一緒のものを使います。水でどれくらい薄めるかで濃淡の表現ができるそうです。
見本には金彩が施されています。これは赤色と金色を一度で色付けするのではなく工程が2回に分けられています。まず赤絵具を約750度で焼き付けた後に、金で再度絵付を行い約650度で焼成します。
今回の講座内で焼き付けは行えませんので、赤色の絵付までです。そのため金彩は、福島礼子先生にお任せすることになりました。スワロフスキーも付けていただき、加飾してより華やかに仕上がるのが待ち遠しいですね。
(焼成前の作品)
赤絵細描の体験をしてから作品展を観覧すると視点も印象も変わります。
ひとつの作品を仕上げるのにどれくらいの時間がかかったのだろうと想像したり、実際に描いた七宝文様や麻の葉文様を作品の中に探してみたり…。同じ図柄でも描き方で印象が異なること、文様には意味があることなど、たくさんの発見がありました。
福島武山先生の喜寿を記念した作品展は、2022年会期・会場を移しながら催されます。
ぜひ全ての会場に足を運び、奥深い赤絵細描の世界をご堪能ください。
「赤絵細描と共に歩んだ軌跡-福島武山 喜寿展-」 2022年2月26日(土)~4月9日(土)
紅ミュージアム(東京都港区南青山)
「喜びの色・・・・・赤」九谷赤絵細描 福島武山 2022年4月17日(日)~6月26日(日)
緑ヶ丘美術館(奈良県生駒市緑が丘)