紅ブログ
作家に学ぶ絵付体験講座「九谷のデコ盛り!イッチン技法と和絵具彩色」を開催しました
手仕事ギャラリー「5colors-うるわしの九谷焼作家たち-」の併催企画として、9月30日(土)に九谷焼の絵付師 相川志保先生をお招きして「九谷のデコ盛」を体験する講座を開催しました。
お皿に細い口金から、白い盛絵具を絞りだして盛りあがるように絵柄を描いたあと、九谷焼の和絵具で色付けをする、相川先生が作品づくりで行っている装飾を教えていただきました。
相川志保氏 陶歴
1999 石川県立九谷焼技術研修所 専門コース 卒業
有限会社マルヨネ 和陶房 入社
2004 中村陶志人氏に師事
2012 石川県九谷焼技術者支援工房 入所
2018 伝統工芸士(九谷焼 加飾部門)認定
2019 能美市九谷焼担い手職人支援工房 入所
2019~現在に至るまで 石川県立九谷焼技術研修所 デコ盛講師
最初に、九谷焼はどういうものか、デコ盛の歴史、地域ごとに少しずつ違いがあること、九谷の絵具の色のことなどをご紹介くださいました。
そして「私流」に伝統的な絵具を組み合わせてやってみよう!という現在の表現の始まりエピソードも聞かせてくださいました。
このあと、いよいよ作品づくりが始まります。
まずは3種類の下絵から自分の作りたい1枚を選び、お皿に下絵を写していきます。
相川先生は、普段カイロ灰を使っているそうで、一度で10枚くらいの器に写せるそうですが、講座で活躍するのは、鉛筆!
それぞれが選んだ絵柄の裏をカーボン用紙のように黒く塗りつぶしていきます。
次に、お皿の好きな位置に紙をとめて、表からボールペンでなぞると下絵の線がうっすらと写し出されました。
ここからが本番です。
カッパ(絞り袋)には、白い盛絵具が、既にちょうど良い固さに調節されて入っており、握りながら圧力をかけて絵具を押し出します。
握り方を教えてもらう、生徒さんの目は真剣。まだカッパを渡されていない手でも、先生の手を見ながら何となく握ってみてしまいます。
昔ながらの職人さんは、カッパの袋部分を折らないそうなのですが、皆がやりやすいようにと講座では折ったものをご用意くださいました。
相川先生が「絞り袋の先がお皿についても大丈夫」「繊細なところはラインを書くのに慣れたあとに描く方がいいですよ!」といったコツを伝えながら、するすると手をとめずに白い線を描くと、あっという間に真っ白なお皿に白盛の絵柄が浮かび上がりました。
先生のデモンストレーションを見たあとは、実際に白盛をスタート。
「太さを均一に引くのが難しい」
「手が震えると、線も震えてしまうぅ、ガタガタしちゃってうまくいかない」
「力の入れ具合が…結構指の力が要りますね」
と、先生がスーッと均一な細い線を引いていたのがいかに難しいかを実感するような声が次々に上がります。
そして、カッパを握りながら線を引く、沈黙の集中時間となりました。
線が描けたら、色付けです。
和絵具の彩色の前には、白盛の線をよく乾かします。
乾いていないと和絵具を置いた時に色が滲んで混ざってしまうそうです。
乾いてマットな質感になっているか、よく観察して、線の重なり合っているところを慎重に触れてみて……固くなっていれば乾燥終了、次の工程です。
彩色の仕方やコツを、相川先生のデモンストレーションで見せていただきます。
和絵具は、水分を含みドロッとしているので、模様の広い部分に置くように盛っていき、狭い方へ少しずつ押すように広げていくと、慣れていない人でも上手に塗れるそうです。
「白盛の線の際まで攻め過ぎて、和絵具がくっついてしまうと、焼いた時に面になってしまうから気をつけて」「広い面にデコボコが出来てしまったら、トントンとすると水分量が多いので、平らになりますよ」と注意点や綺麗に仕上がるコツも教えてくださいました。
和絵具は、焼成前と後では見た目の色が変化します。こちらは何色でしょうか。
焼くと、左は少し濃くツヤが出るそうですが、見た目通りの朱赤。
でも、右は、写真の色からは想像できませんが緑色になるそうです。
時間をかけて、花弁や葉などを丁寧に色付けしていきます。
塗りたい色の絵具のある席にお互い譲り合いながら移動して彩色を仕上げていきました。
花の絵柄の周りに、白盛の飾り付けをしてみる方もおられ、それぞれ世界で一つのオリジナルの作品となりました。
講座にご参加くださった皆さまの作品はこちら!
作品は、相川先生にお預けして焼成をしていただきます。
今はピンク色が薄くて、葉っぱはグレーですが、焼き上がったらどんな風になるでしょうか。
とても楽しみですね。
楽しい講座をご準備くださった相川先生、ありがとうございました。
後日、焼成した作品が届きました!
手仕事ギャラリー「5colors-うるわしの九谷焼作家たち-」は2023年10月14日(土)まで開催しています。ぜひ、伝統を守る一方で、技法やデザインをそれぞれの感性でリデザインして表現する珠玉の作家たちの作品を本展でご覧ください!
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