伝統の紅づくり

門外不出の匠の技

紅の製法は、代々口伝で受け継がれ、門外不出とされた秘伝の技。より美しい玉虫色の輝きを求め、磨き培われてきた紅づくりの技は、歴代の当主と、当主に認められた紅匠(紅職人)によって今日に受け継がれています。
紅花から抽出した自然の「赤」を、玉虫色の「紅」にまで昇華させた匠の「技」は、まさに紅屋の誇りです。

最上紅花から紅餅を作る

小町紅の玉虫色の輝きの原点は、山形県の最上紅花にあります。 江戸時代から最上地方の紅花は良質であるともてはやされました。
最上紅花の開花期は7月上旬から中旬。紅花の花びらを摘み取り、「紅餅」に加工してから紅屋や染物屋などに卸されます。紅餅は保存が効く上に、乾燥花より赤い色素が多く抽出できるという利点があるため、江戸時代には紅餅に加工してから出荷されていました。現在でも山形県では昔ながらの加工法で紅餅が作られています。

〈1/5〉

花びらを摘み取る。

〈2/5〉

異物を取り除き、水洗いする。

〈3/5〉

手でよく揉みながら黄色い色素を洗い流し、日陰で酸化、発酵させる。発酵が進むにつれ、花びらの赤味が強くなる。

〈4/5〉

発酵した花びらを臼に入れてつき、煎餅状にする。

〈5/5〉

4を天日干しすれば、紅餅が完成する。

紅餅から小町紅を作る

紅匠は、幾工程もかけて紅餅から純度の高い赤色色素を取り出します。長年の経験で培った熟練の勘が、玉虫色の紅を作り上げます。

〈1/8〉

水に漬け、ふやかした紅餅の水気を切り、アルカリ水溶液をかける。

〈2/8〉

花びら(紅餅)をしぼり、紅液を取り、酸液を加える。

〈3/8〉

2の紅液をゾク(麻の束)にかけ、赤色色素を染め付ける。

〈4/8〉

ゾクにアルカリ水溶液をかけ、再度しぼり、濃縮紅液を取る。

〈5/8〉

濃縮紅液に酸液を加え混ぜる。しばらく置くと赤色色素が沈殿する。

〈6/8〉

蒸篭(せいろ)に5を流し入れ、余分な水分が切れると泥状の紅が残る。これを集め、紅箱に移す。

〈7/8〉

紅箱から適量の紅を取り、筆などで器の内側に塗布し、均一に伸ばす。

〈8/8〉

自然乾燥させ、玉虫色の小町紅が完成する。